雨の朝パリに死す(1954/米/The Last Time I Saw Paris)
監督 リチャード・ブルックス
出演 エリザベス・テイラー / バン・ジョンソン / ドナ・リード / ウォルター・ピジョン
 
 
 原作はJ・S・フィッツジェラルド。第二次大戦が終わろうとしている頃のパリで、アメリカ人のチャールズが同じくアメリカ人のヘレンと恋に落ち、結婚する。チャールズは通信社で働きながら小説家をめざして小説を書く日々を送る。女の子も生まれ、当初はうまくいっていたものの、ヘレンは夜ごと遊びをかさね、チャールズは小説家としていっこうに芽が出ないことから苛立ちを募らせていく。
 雪の降り積もるある冬の雨の日、パーティから帰ってきたヘレンだが、チャールズは家の鍵をかけてしまって家には入れない。ヘレンは雨の中、妹のマリアンの家まで傘をささずに歩いていくが、そのとき寒さで体をこわし、死んでしまう。
 非常に丁寧に構成されているという印象を受ける。通信社の記者チャールズとヘレンがおたがい惹かれていく様子や、チャールズの小説がなかなか受け入れられないことから次第に苛立ちを募らせていく様子、そんなチャールズに対してヘレンのこころも離れていく様子、などほんとうに丁寧に教科書的に分かりやすく描かれている。だが、まったく面白い映画とはおもえなかった。せっかくストーリーの舞台がパリなのだから、パリにいるアメリカ人としての孤独や、パリの風俗をもっと全面にだすなど、うまく使えばよかったのになどと、おもってしまった(すこしは入ってはいるのだけれど。)
 ヘレンを演ずるのはエリザベス・テイラーで、よく映画史上最高の美女とか言われているけれども、わたしにはどうもあの濃い毛虫のような眉毛が気になってぜんぜん美女にはみえなかった。1954年にはあの毛虫眉毛が美人だったのだろう。ヴァン・ジョンソンもシャキッとしたところがなく、しまりのない顔で美男には見えない。ヴァン・ジョンソンはいちおう美男と言うことなのだろうか。
 出演者中一番印象に残ったのは子ども。ヘレンとチャールズの子どもを演ずる子役がとってもかわいい。歯が抜けたから口をあかないシーンやダンスをするシーンは最高にかわいらしい。
 最近の外国映画の邦題は発音をカタカナでそのままの表したものが多く、(「ミッション・インポシブル」とか「アメリカン・ビューティ」とか)、たまに邦題が付けられていてもなんだかパッとしないタイトルが多いのだが、この作品の邦題はすばらしい。『雨の朝パリに死す』。声に出すとつくづく感心してしまうほどすばらしい。でも、多分フィッツジェラルドの作品だから映画関係のひとでなく、文学関係の人が邦題を付けたのだろうと思う。
 広島に原爆が落とされた日にチャールズとヘレンがイチャイチャしてたりして、なんとなく複雑な気分になった。
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